今回はNHKの人気番組『100分de名著』が出している本のご紹介です。
100分de名著では様々な名著をわかりやすく解説するという番組です。
名著は文学書や哲学書も多く普通に読むには読書難易度の高い作品が多いです。
この番組はそんな難しい本を優しく解説してくれる架け橋のような番組かなと思います。
そしてこの読書の学校というシリーズは放送回はなく、
書籍のために企画されたものだったと記憶しています。
本書では夏目漱石の『坊っちゃん』を題材にあの養老孟子さんが解説をしてくれるというものです。
『坊っちゃん』と養老孟子さんに興味のある方必見の内容になっています。
この本の概要
『坊っちゃん』を読んだことがない人でも理解ができるように構成されています。
坊っちゃんを読むきっかけになるのはもちろん、
読んだことがあってもここまで読みとれていなかったなというポイントが沢山あります。
単にストーリーをなぞるだけの読み方をしていた方にもおススメできる内容です。
この本はこんな人にオススメです。
「大人になる」とはどういうことか
坊っちゃんは、生粋の江戸っ子の主人公が教師となって松山の中学に赴任する物語。
夏目漱石自身も実際に松山の中学で教師をしており、その体験をもとに書かれています。
その中で、学校、人間関係の中に渦巻く悪を退治するというお話。
そんな坊っちゃんの大きなテーマは「大人になる」ということ。
そしてこれは夏目漱石自身のテーマでもあった。
漱石は東京帝国大学の英文学を卒業し、
英語教師を勤め文部省派遣留学命じられロンドンへ行くことになる。
この留学は本人の意に反したものでロンドンで本当に自分がやりたいことを考えた。
そして、他人ではなく自分で考えるという結論に至ります。
そこから吾輩は猫であるや坊っちゃんを書き始めたのです。
「自分で考えること」(=自己本位)がまさに「大人になる」ということなのです。
夏目漱石のいう自己本位とは、
自分勝手という意味では決してなく、他人のことを尊重しつつ自分で考えるということです。
ただし日本社会はこの大人になるということが難しい。
坊っちゃんも現にその社会の中で悪戦苦闘します。
なぜなのか?気になる方は本書か『坊っちゃん』を読むとよくわかります。
気になる方は読んでみてくださいね。
「やってみる」と何かが変わる
坊っちゃんの中に出てくる「清」という人物がいます。
「清」は坊っちゃんの家の下女で坊っちゃんのことを孫のように可愛がる存在です。
坊っちゃんは物語中、清と手紙のやり取りを続けています。
そして世の中の複雑さにもまれる坊っちゃんの純粋さを支える存在となります。
そんな中、ある日坊っちゃんは手紙を書くのをやめてしまいます。
そこから文句を垂れていた坊っちゃんは一気に行動に移すようになります。
思っていただけのことを行動に起こす。つまり知行合一です。
やってみることで何かが変わり、それは良い方向に必ずしも行くわけではないが少なくとも環境が動くということです。
「知行合一」は養老さんの本を読んでいると必ず出てくるといってもいいくらいの言葉です。
私もこの言葉が大好きで、何をするときにも心がけています。
最後に
私は映画や小説などの物語にも構文があると恩師に教えられました。
つまり読み方を知らないとただ物語をなぞるだけで終わってしまって、
著者の言いたいことが分からず深く理解できないということです。
今回の著書ではまさにその物語の読み方を教えてくれる本だと思いました。
この本を読んでからまた坊っちゃんを読むと見える景色が全然違うと思います。
私もまた坊っちゃんを読んでみたいと思います。
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