『進化とは何か』|生き物が「よくできている」理由

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「鳥は、どうやって空を飛べるようになったんだろう」

子どものころ、そんな疑問を持ったことはありませんか。

  • 目はカメラのように精密なのに、誰が設計したわけでもない
  • 生き物の形は、あまりにも「うまくできすぎている」
  • 進化と聞くと、気の遠くなるような話に思えて身構えてしまう

そんな「なぜ?」に、一つずつ答えてくれる本があります。『利己的な遺伝子』で知られる生物学者リチャード・ドーキンスの『進化とは何か ドーキンス博士の特別講義』です。

もとになっているのは、英国王立研究所で子どもたちに向けて行われた講義。だから専門知識はいりません。読み終えたころには、道ばたの花や鳥が、少しだけちがって見えてくるはずです。

この記事では、『進化とは何か』の要約と感想、読んで印象に残った4つのポイントをまとめました。

この記事でわかること

  • 『進化とは何か』の内容と全6章の構成
  • 「デザイノイド」「収斂進化」など、本書のキーワード
  • 複雑な生き物が「小さな積み重ね」で生まれるしくみ
  • 実際に読んで、つまずいた箇所と心に残ったこと
目次

『進化とは何か』とはどんな本?【概要】

項目内容
書名進化とは何か ドーキンス博士の特別講義
著者リチャード・ドーキンス
編・訳吉成真由美
出版社早川書房(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
刊行2016年12月
ページ数・価格272ページ・1,320円(税込)
ジャンル科学(進化生物学の入門)
読書難易度★★☆☆☆(一部、コンピューターモデルの説明だけ少し難しめ)

本書は、ドーキンスが1991年に英国王立研究所のクリスマス・レクチャーで行った5回の講義をもとに、吉成真由美さんが編集・翻訳したものです。クリスマス・レクチャーは、1825年にファラデーが始めた、子どもたちに科学を伝える伝統ある講義です。

テーマは一つ。「広い宇宙に、なぜ生命が存在するのか」。花とハチの関係、鳥の翼、イヌの毛並み、脳のしくみ——身近な例を使いながら、進化のメカニズムを順番に解き明かしていきます。巻末には、本書でしか読めない著者へのインタビューも収められています。

本書の構成

  • 第1章 宇宙で目を覚ます
  • 第2章 デザインされた物と「デザイノイド」(デザインされたように見える)物体
  • 第3章 「不可能な山」に登る
  • 第4章 紫外線の庭
  • 第5章 「目的」の創造
  • 第6章 真実を大事にする——吉成真由美インタビュー

第1章から第5章が講義、第6章がインタビューです。章ごとに話が完結しているので、気になる章から読んでもかまいません。

著者リチャード・ドーキンスとは

リチャード・ドーキンスは、1941年ケニアのナイロビ生まれの進化生物学者です。オックスフォード大学で学び、カリフォルニア大学バークレー校を経て、オックスフォード大学で教えました。

代表作は、生き物を「遺伝子が生き残るための乗り物」として捉えた『利己的な遺伝子』。進化の考え方を一般の読者に広めた書き手として、世界的に知られています。

『進化とは何か』はこんな人におすすめ

  • 進化に興味はあるけれど、何から読めばいいかわからない人
  • 『利己的な遺伝子』は分厚くて、手が伸びなかった人
  • 生き物の「うまくできた形」に、素朴な疑問を持っている人
  • 子どもに「どうして?」と聞かれて、うまく答えられなかった人
  • 理系の本は苦手でも、身近な例から科学にふれてみたい人

逆に、こんな人には合わないかも

  • 最新の進化研究を知りたい人
  • 数式や専門用語で、厳密に学びたい人

講義は1991年のものなので、その後の研究の進展までは書かれていません。あくまで「進化の考え方」をつかむための入門書です。土台をつくってから、新しい本に進むとよいでしょう。

【要約①】デザインされたように見えても、設計者はいない

第2章のキーワードはデザイノイド。「デザインされたように見える物体」という意味の、ドーキンスの造語です。

時計やカメラは、人間が目的をもって設計した「デザインされた物」です。いっぽう、生き物の目や翼も、まるで誰かが設計したかのように精密にできています。けれど、そこに設計者はいません。設計されたように「見える」だけ——それがデザイノイドです。

では、設計者なしに、なぜこれほどよくできた形が生まれるのか。その答えが、本書全体を通して語られる自然選択です。自然選択とは、その環境で生き残りやすく、子を多く残せる性質が、世代を重ねるうちに増えていくしくみのこと。

身のまわりの「よくできている」ものを、少しだけちがう目で見たくなる章です。

【要約②】進化は一度の奇跡ではなく、小さな幸運の積み重ね

第3章の題は「『不可能な山』に登る」。目のような複雑なしくみが、一度の偶然でいきなり生まれる確率は、ほぼゼロです。正面の切り立った崖を、一気に登ろうとするようなもの。

けれど、山の裏側にはゆるやかな坂道があります。小さな変化が起き、その中で役に立つものが残る。これを何世代もくり返せば、崖のように見えた高さにも、一歩ずつたどり着ける。わたしたちは、そうした小さな幸運が積み重なった先に存在している——本書は、そう語りかけます。

この考え方を目で見せるのが、アースロモルフというコンピューターモデルです。画面上の単純な図形を少しずつ変え、選び続けると、やがて虫やエビのような姿が現れます。

目の進化についての話も印象的でした。目は、思っていたよりずっと短い時間で進化しうるというのです。「莫大な時間がかかるはず」という思い込みは、この章で静かにくつがえされます。

一度で完成しなくてもいい。小さな前進を重ねることの意味が、生き物の歴史から見えてきます。

【要約③】似た課題には、似た答えがたどり着く

本書で知った、もう一つの面白い概念が収斂進化(しゅうれんしんか)です。系統の離れた生き物が、似た環境で似た課題を解くうちに、似た形にたどり着くことをいいます。

驚いたのは、イカの目が人間の目とよく似ていること。共通の祖先から受け継いだのではなく、それぞれが別の道を通って、同じような「カメラの目」にたどり着いたのです。

設計図を共有していなくても、同じ問題には同じような答えが出る。進化が「でたらめ」ではないことを、強く感じさせる話です。

【要約④】脳は世界の模型をつくり、そこから「目的」が生まれた

最終講義の第5章は「『目的』の創造」。ここで語られるのは、脳の話です。

わたしたちが見ている世界は、あるがままの現実ではありません。目から入った情報をもとに、脳が頭の中に組み立てた模型——いわば、シミュレーションされた世界です。

頭の中に世界の模型を持てると、実際に動く前に「こうしたらどうなるか」を試せます。自然選択そのものには目的がありません。それなのに、自然選択は「目的を持てる脳」を生み出した。章題の「目的の創造」には、そんな逆転が込められているように読めました。

いま見ているこの景色も、自分というフィルターを通した一つのバージョンなのかもしれません。

今日から活かせる3つのヒント

①「よくできている」ものには、途中の段階を想像してみる

完成した形だけを見ると、奇跡のように思えます。けれど、どんなものにも、少しずつ形を変えてきた途中の段階があります。生き物でも、仕事の成果でも、そう考えると焦りが少しやわらぎます。

②見えている世界は、自分の脳がつくった模型だと思い出す

同じ出来事でも、人によって見え方がちがうのは自然なこと。自分の見方が唯一の現実ではないと知るだけで、人の意見に耳を傾けやすくなります。

③わからない箇所は、結論だけつかんで先へ進む

アースロモルフの説明は、正直なところ、よくわかりませんでした。それでも「小さな変化を選びながら積み重ねると、複雑な形が生まれる」という結論がつかめれば十分です。つまずいても、立ち止まらなくて大丈夫です。

『進化とは何か』の感想・レビュー

読みながら何度も、生き物の話が自分の話に重なりました。

収斂進化を知ったとき、ふと思ったのは「同じ趣味を持つ人どうしが、似た見た目になっていく」ことです。もちろん、これは遺伝子の進化ではありません。けれど、似た条件が、別々の出発点から似た結果を生むという構図は、どこか通じるものがあります。

いちばん心に残ったのは、人為選択の話でした。人間に選ばれ、改良されてきた生き物の中には、もはや人の手なしでは生きていけなくなったものがいる。誰かの力で育てられた存在は、自分の力で生き抜くことが難しくなるのかもしれない——誰かを育てる立場にある自分にとって、ひやりとする話でした。

もちろん、何世代もかけて性質が固定される生き物の話と、一代のうちの子育ては同じではありません。だからこそ、手を貸すことと、少しずつ手を離すこと。その両方を考えるきっかけになりました。

そして第5章。わたしたちは頭の中の仮想空間を通して現実を見ている、という話には、ものの見方そのものを揺さぶられました。

子ども向けの講義なのに、大人が読んでこそ響く一冊です。

生き物の「よくできた形」は、一度の奇跡ではなく、小さな幸運の積み重ね。そして、その積み重ねの先に、世界を思い描くわたしたちがいる。

よくある質問

Q. 『進化とは何か』は難しいですか?

A. 子ども向けの講義がもとになっているので、専門知識がなくても読めます。コンピューターモデル(アースロモルフ)の説明だけは少し難しく感じましたが、結論をつかめば読み進められます。

Q. 『利己的な遺伝子』を読んでいなくても大丈夫ですか?

A. 大丈夫です。本書は進化の基本から順に説明しているので、ドーキンスの入門書として最初に読む一冊に向いています。

Q. どの章から読めばいいですか?

A. 順番に読むのがおすすめですが、生き物の形に興味がある人は第2・3章、脳や心に興味がある人は第5章から読んでもかまいません。第6章のインタビューでは、著者自身の歩みが語られています。

生き物の進化にもっとふれたい人には、『はずれ者が進化をつくる』もおすすめです。生き物の「怠けて見える」暮らしの理由を知りたい人は、『ナマケモノはなぜ怠けるのか』もあわせてどうぞ。

道ばたの花や鳥を、少しちがう目で見てみたいあなたへ。ぜひ手に取ってみてください。

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