『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』|会計アレルギーの人の最初の一冊

「会計って聞くだけで、ちょっと身構えてしまう」

数字や決算書の話になると、急に頭が働かなくなる。そんな感覚はありませんか。

  • 「会計」「財務」という言葉に、なんとなく苦手意識がある
  • 簿記の本を開いてみたけれど、最初の数ページで閉じてしまった
  • 仕事で数字の話が出ると、わかったふりをしてやり過ごしている

私は事業会社の財務部で働き、簿記2級も持っていますが、最初から会計が好きだったわけではありません。そんな私が「会計って、案外おもしろいかもしれない」と思えたきっかけの一冊が、山田真哉さんの『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』です。

手に取った理由は、正直に言うと単純で、タイトルが気になったから。「たしかに、さおだけ屋ってどうやって成り立っているんだろう?」——その疑問から、気づけば会計の入り口に立っていました。

この記事では、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の要約と感想、そして財務部で働く立場から感じた「この本の使いどころ」をまとめました。

この記事でわかること

  • 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』がどんな本で、何が学べるのか
  • 身近な疑問から会計の考え方をつかむ、本書の読み方
  • 財務の実務とつながる「資金繰り」の考え方
  • どんな人に向いていて、次に何を読めばいいか
目次

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』とはどんな本?【概要】

項目内容
書名さおだけ屋はなぜ潰れないのか?―身近な疑問からはじめる会計学
著者山田真哉
出版社光文社(光文社新書)
発売2005年2月
ページ数216ページ
ジャンル会計入門・読み物
読書難易度★☆☆☆☆(会計の知識ゼロでも読める)

本書は、身近な疑問をきっかけに、会計の本質的な考え方をつかむための入門書です。出版社の紹介によると、財務諸表はほとんど登場せず、専門用語も少なめ。会計の教科書というより、気軽に読める読み物に近い一冊です。

各章では、日常の「なぜ?」から会計のテーマへとつなげていきます。たとえば、売り切れの店から「機会損失」、割り勘から「キャッシュ・フロー」、商品が山積みの店から「在庫と資金繰り」を学ぶ、といった具合です。

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』で学べる会計テーマ:身近な疑問と会計の考え方の対応図

本書で扱うテーマ

  • 利益の出し方(さおだけ屋の疑問)
  • 連結経営(高級フランス料理店の疑問)
  • 在庫と資金繰り(商品が山積みの店の疑問)
  • 機会損失と決算書(売り切れの疑問)
  • 回転率(麻雀の疑問)
  • キャッシュ・フロー(割り勘の疑問)
  • 数字のセンス

著者・山田真哉さんとは

山田真哉さんは公認会計士です。1976年、兵庫県神戸市生まれ。大阪大学文学部史学科を卒業後、一般企業勤務を経て公認会計士試験に合格し、中央青山監査法人、プライスウォーターハウスクーパースを経て独立しています。

文学部出身という経歴もあってか、本書は会計の専門家が書いたとは思えないほど、やわらかく読みやすい文章で書かれています。

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』はこんな人におすすめ

  • 「会計」「財務」という言葉にアレルギーがある人
  • 会計の知識がまったくない、本当の初心者
  • 簿記や会計の本に挑戦して、挫折したことがある人
  • 難しい本の前に、会計の「とっかかり」がほしい人

逆に、こんな人には合わないかも

  • すでに簿記の勉強をしていて、仕訳や決算書の知識がある人
  • 財務諸表の読み方を体系的に学びたい人

本書は、会計の知識を深めるための本ではありません。会計の知識としては浅く、決算書の読み方を身につけたい人には物足りないはずです。そのかわり、「会計って思ったより身近だな」と感じさせてくれる力は、ほかの入門書にはないものだと感じます。

【要約①】会計は、身近な「なぜ?」から学べる

会計というと、決算書や仕訳といった、とっつきにくいものを思い浮かべがちです。

本書はそこから入りません。さおだけ屋、売り切れの店、割り勘——どれも日常で見かける場面です。そうした場面の「なぜ?」を手がかりに、その裏にある会計の考え方をひとつずつ解き明かしていきます。

出版社の紹介にもあるとおり、本書の考え方は「会計はけっしてやさしいものではないけれど、会計の本質的な考え方はそれほどむずかしくない」というものです。

難しい言葉を覚える前に、考え方だけをつかむ。それが本書の一番の特徴です。

【要約②】さおだけ屋の疑問から見えてくる「利益の出し方」

私が一番「なるほど」と思ったのが、タイトルにもなっているさおだけ屋の話です。

あまり売れているようには見えないのに、なぜ商売が続くのか。この疑問を入り口に、本書は「利益はどうやって生まれるのか」という会計の基本へと話を進めていきます。答えはぜひ本書で確かめてほしいのですが、謎解きのように読み進められるのが楽しいところです。

ここで扱う「利益」の考え方は、会計の出発点です。一般的に、利益は「売上」から「費用」を差し引いたもの。利益を増やすには、売上を増やすか、費用を減らすかのどちらかです。

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の基本となる利益の考え方:売上−費用=利益の図

当たり前に聞こえるかもしれません。でも、この当たり前を身近な商売に当てはめて考えると、ふだん見ているお店の見え方が少し変わってきます。

【要約③】「黒字なのにお金がない」——資金繰りとキャッシュ・フロー

本書では、商品が山積みの店や割り勘の話を通して、「在庫と資金繰り」や「キャッシュ・フロー」も扱っています。

一般的に、利益が出ていることと、手元にお金があることは別の話です。商品を仕入れてもすぐには売れない、売っても代金の入金が先になる——そうしたズレがあると、利益は出ているのに支払いのお金が足りない、ということが起こります。

この「お金の流れ」を意識するのが、資金繰りの考え方です。数字の上の利益だけでなく、実際に現金がいつ入って、いつ出ていくのか。本書は、それを身近な例で感覚的に教えてくれます。

実務でどう役立ったか:「資金繰り」の話がイメージできる

ここからは、事業会社の財務部で働く私の実感です。

財務の仕事では、資金繰りの話が日常的に出てきます。本書を読んで、「利益」と「お金の流れ」は別物だという感覚を持てていたことは、資金繰りの話を理解するうえでの土台になりました。

もちろん、本書だけで実務ができるようになるわけではありません。会計の知識としては浅く、実務で使う細かい知識は別に学ぶ必要があります。ただ、数字の話に苦手意識がある人が「お金の流れ」をイメージするための入り口としては、十分に役立つ一冊だと思います。

どの順番で読む?会計入門のおすすめルート

本書は「とっかかり」の本です。会計への苦手意識が薄れたら、次の本へ進むのがおすすめです。

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』から始める会計入門のおすすめルートの図
段階おすすめの本向いている人
① とっかかり『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』会計アレルギーがある、本当の初心者
② 全体像をつかむ『財務3表一体理解法』財務に配属された人、社会人1年目
③ 仕組みを学ぶ簿記の勉強仕訳から本格的に学びたい人

※私自身は、財務3表の本を簿記の前に読み、それが簿記の勉強の助けになりました。さおだけ屋の本は、それよりもさらに手前の一冊という位置づけです。

今日から活かせる3つのヒント

① 身近なお店を「なぜ成り立つのか」で見てみる

街で見かけるお店に、「この店はどうやって利益を出しているんだろう?」と問いかけてみる。それだけで、会計の考え方を使う練習になります。

② 「利益」と「お金」を分けて考える

利益が出ていることと、お金があることは別。ニュースや自社の話を聞くときに、この2つを分けて考えるだけで、理解がぐっと深まります。

③ わからない言葉は、身近な例に置き換える

会計の用語に出会ったら、本書のように身近な例に置き換えて考えてみる。難しい言葉も、少しだけ身近に感じられるはずです。

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の感想・レビュー

タイトルが気になって手に取った本でしたが、読み終えたときには「会計って、案外おもしろいかもしれない」と思えていました。

会計の知識としては、たしかに浅い本です。でも、苦手意識を持っている人にとって一番の壁は、知識の量ではなく「とっつきにくさ」なのだと思います。本書はその壁を、身近な疑問という形で、すっと取り払ってくれます。

会計は、決算書の中だけにあるものではない。身近な「なぜ?」の中に、もう会計は始まっている。

よくある質問

Q. 会計の知識がまったくなくても読めますか?
A. 読めます。財務諸表はほとんど登場せず、専門用語も少なめなので、本当の初心者に向いている本です。

Q. 簿記の勉強の役に立ちますか?
A. 試験対策にはなりません。ただ、会計への苦手意識をなくす「とっかかり」としては役立ちます。簿記の前には、『財務3表一体理解法』を挟むのがおすすめです。

Q. 2005年の本ですが、今読んでも大丈夫ですか?
A. 本書が扱うのは、利益や資金繰りといった会計の基本的な考え方です。こうした考え方は、時代が変わっても通用するものだと思います。

まとめ:会計の入り口は、身近な「なぜ?」にある

  • 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は、身近な疑問から会計の考え方をつかむ入門書
  • 財務諸表や専門用語はほとんど出てこず、読み物として気軽に読める
  • 会計の知識としては浅いが、会計アレルギーの人の「とっかかり」に最適
  • 慣れてきたら、『財務3表一体理解法』や簿記へと進むのがおすすめ

数字の話になると、つい身構えてしまうあなたへ。ぜひ手に取ってみてください。

簿記の勉強に興味が出てきた方は、働きながら簿記2級に独学で合格した勉強法もあわせてどうぞ。

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