「決算書の数字を見ても、何が良くて何が悪いのか、さっぱりわからない」
社会人になって、あるいは財務や経理の部署に配属されて、初めて決算書を目にしたとき。そこに並んでいるのは、ただの数字の羅列に見えるかもしれません。
- 損益計算書と貸借対照表、何が違うのかよくわからない
- 「利益が出ているのにお金が足りない」という話の意味がつかめない
- 簿記を勉強しようと思うけれど、仕訳の暗記から入るのが不安
私は事業会社の財務部で働いています。今でこそ簿記2級を持っていますが、決算書の数字が「意味のあるもの」として見えるようになったきっかけは、簿記の勉強を始める前に読んだ一冊でした。それが、國貞克則さんの『財務3表一体理解法』です。
この記事では、『財務3表一体理解法』の要約と感想、そして財務部で働く立場から感じた「実務での効き方」をまとめました。
この記事でわかること
- 『財務3表一体理解法』がどんな本で、何が学べるのか
- 財務3表(PL・BS・CF)を「つなげて」理解する考え方
- 財務部の実務で、どう役に立ったか
- 簿記の前に読むべきか、後に読むべきか
『財務3表一体理解法』とはどんな本?【概要】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書名 | 新版 財務3表一体理解法 |
| 著者 | 國貞克則 |
| 出版社 | 朝日新聞出版(朝日新書) |
| 発行 | 2016年10月 |
| ページ数 | 330ページ |
| ジャンル | 会計・財務入門 |
| 読書難易度 | ★★☆☆☆(会計の予備知識がなくても読める) |
本書は、会計の入門書です。最大の特徴は、損益計算書(PL)・貸借対照表(BS)・キャッシュフロー計算書(CF)の3つを、別々ではなく「一体」として学ぶという点にあります。
書店の内容紹介によると、本書では取引ごとに財務3表をつくり、3つの表の「つながり」を確認しながら、会計の全体像と仕組みを学んでいく構成になっています。新版では、財務3表を見開き2ページに収めて見やすくしたほか、貸借対照表の純資産の部の解説も詳しくなっています。
本書の構成
- 第1章 財務3表の基礎知識
- 第2章 財務3表一体理解法―基礎編
- 第3章 財務3表一体理解法―発展編
- 第4章 さらに理解を深めたい人のために
- 第5章 英文会計の基礎知識
著者・國貞克則さんとは
國貞克則さんは、1961年岡山県生まれ。東北大学機械工学科を卒業後、神戸製鋼所に勤務。1996年にMBAを取得し、2001年にボナ・ヴィータコーポレーションを設立しています。会計や経営に関するセミナー、eラーニング講座などを担当しています。
もともと会計の専門家ではなく、エンジニア出身という経歴も、本書が「会計を知らない人の目線」で書かれている理由の一つかもしれません。
『財務3表一体理解法』はこんな人におすすめ
- 財務・経理の部署に配属されたばかりの人
- 社会人になりたてで、決算書の読み方を基礎から知りたい人
- 簿記の勉強を始める前に、会計の全体像をつかんでおきたい人
- 決算資料を「数字の羅列」ではなく、意味のあるものとして読みたい人
逆に、こんな人には合わないかも
- 簿記2級以上の知識があり、財務3表のつながりをすでに理解している人
- 仕訳の練習問題や、試験対策をしたい人
本書は「全体像をつかむ」ための本です。試験対策の問題集ではないので、資格の勉強そのものは別の教材で進める前提で読むのがよいと思います。
【要約①】財務3表はバラバラではなく、つながっている
会計の入門書の多くは、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を、それぞれ別の章で説明します。
ところが実際の会社の取引は、1つの取引が複数の表に同時に影響を与えます。本書は、この3つの表を「一体」として見ることを出発点にしています。
ざっくり言えば、3つの表の役割は次のとおりです。
| 財務3表 | ざっくり言うと | わかること |
|---|---|---|
| 損益計算書(PL) | 一定期間の「成績表」 | どれだけ儲かったか |
| 貸借対照表(BS) | ある時点の「財産の一覧」 | 何を持っていて、どうやってお金を集めたか |
| キャッシュフロー計算書(CF) | 一定期間の「お金の出入り」 | 現金が実際にどう動いたか |
この3つが別々に存在するのではなく、数字がつながり合っている。そこが見えると、決算書の見え方が大きく変わります。
【要約②】取引ごとに3表を動かして理解する
本書の学習法のユニークなところは、取引を1つずつ追いかけながら、そのたびに財務3表をつくっていく点です。
「お金を借りた」「商品を仕入れた」「売上が立った」といった取引が起きるたびに、3つの表のどこがどう変わるかを確認していきます。この繰り返しで、3表のつながりを体で覚えていくイメージです。

暗記ではなく、「この取引をしたら、ここが動く」という因果関係で理解できるので、知識がばらばらになりにくいのが特徴だと感じました。
【要約③】PL・BS・CFの関係がわかると、一気に理解が進む
私が本書で一番「腹落ちした」のは、PL・BS・CFの関係でした。ここがわかると、会計の理解が一気に進みます。
たとえば会計の一般的な関係として、次のようなつながりがあります。
- PLで計算した利益は、BSの純資産(利益剰余金)に積み上がっていく
- CFで計算した期末の現金残高は、BSの現金の金額と一致する

一つひとつは知識として聞いたことがあっても、「なぜそうなるのか」を取引の流れで確認すると、理解の深さがまったく違います。本書は、このつながりを丁寧に見せてくれる一冊です。
実務でどう役立ったか:決算書の数字に「意味」が見えるようになった
ここからは、事業会社の財務部で働く私の実体験です。
本書を読む前、決算書に書いてある数字は、私にとって単なる数字に過ぎませんでした。売上がいくら、利益がいくら、資産がいくら。並んでいる数字は読めても、それが何を意味しているのかがわからなかったのです。
本書で3表のつながりを理解してから、数字の意味が少しずつわかるようになりました。業務で自社の決算資料を読むときも、以前より深く読み込めるようになったと感じています。
財務の仕事は、数字を「作る」だけでなく「読む」場面も多い仕事です。その土台を最初につくってくれたのが、この本でした。
簿記の前に読むか、後に読むか
私は、簿記2級の勉強を始める前に本書を読みました。結果的に、この順番はとてもよかったと思っています。
簿記の勉強は、仕訳から入ります。最初は「借方」「貸方」を覚えるだけで精一杯で、その仕訳が最終的にどこにつながるのか見えにくいものです。
本書を先に読んでいたおかげで、仕訳の意味がイメージでき、簿記で学ぶ仕訳がどう決算書につながっていくのかが見えていました。そのため、スムーズに簿記の勉強に入ることができました。

| 読む順番 | 向いている人 |
|---|---|
| 簿記の前に読む | 会計の全体像を先につかみ、仕訳の意味をイメージしながら勉強したい人 |
| 簿記の後に読む | 仕訳はできるが、決算書全体のつながりがまだ腹落ちしていない人 |
※私自身は「前に読む」派です。後に読む場合の効果は、私の経験ではないため目安としてご覧ください。
今日から活かせる3つのヒント
① 決算書は3つセットで見る
PLだけ、BSだけを見るのではなく、3つの表を並べて見る習慣をつけると、数字のつながりが見えやすくなります。
② 1つの取引が「どこを動かすか」を考える
日々の業務で取引を見たとき、「これはPL・BS・CFのどこに影響するか」を考えてみる。それだけで、会計の感覚が少しずつ身についていきます。
③ 自社の決算資料で答え合わせをする
本書で学んだことを、自社の決算資料に当てはめてみてください。教科書の例よりも、ずっと実感をもって理解できるはずです。
『財務3表一体理解法』の感想・レビュー
財務部に配属された当初の私に、一番必要だったのは「全体像」でした。細かいルールや仕訳を覚える前に、会計がどういう仕組みで動いているのかを知りたかったのだと思います。
本書は、その全体像を最初にくれる一冊でした。読み終えたとき、決算書の数字が、ただの数字ではなく「会社の動きを表したもの」として見え始めたのを覚えています。
決算書は、暗記するものではなく、つながりで読むもの。その最初の一歩を、この本は教えてくれます。
よくある質問
Q. 会計の知識がまったくなくても読めますか?
A. 読めます。私も簿記の勉強を始める前に読みました。むしろ、予備知識がないうちに読むほうが、全体像をつかむ効果を感じやすいと思います。
Q. 簿記の試験対策になりますか?
A. 試験対策の問題集ではありません。ただ、仕訳の意味がイメージしやすくなるので、簿記の勉強に入る前の準備としてはとても役に立ちました。
Q. 続編や関連書はありますか?
A. 同じ著者による『新版 財務3表一体理解法 発展編』や『新版 財務3表図解分析法』があります(いずれも朝日新書)。
まとめ:決算書を「数字の羅列」から「意味のある情報」へ
- 『財務3表一体理解法』は、PL・BS・CFを一体で学ぶ会計入門書
- 取引ごとに3表を動かすことで、つながりを因果関係で理解できる
- 財務に配属された人、社会人になりたての人に特におすすめ
- 簿記の前に読むと、仕訳の意味がイメージしやすくなる
決算書の数字が、まだ数字の羅列に見えているあなたへ。ぜひ手に取ってみてください。
簿記の勉強をこれから始める方は、『科学的根拠に基づく最高の勉強法』の要約・レビューも参考になります。仕事の考え方を深めたい方は、『メタ思考』の要約・レビューもあわせてどうぞ。
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コメント
コメント一覧 (1件)
[…] ちなみに、財務部に戻ってすぐ、簿記の勉強より先に読んで役立ったのが『財務3表一体理解法』です。損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書のつながりが先にわかると、簿記で学ぶ仕訳の「意味」が見えやすくなります。『財務3表一体理解法』の要約・レビューもあわせてどうぞ。 […]