「養老孟司さんの本、気になるけど、どれから読めばいいんだろう」
書店に行くと、養老さんの本はずらりと並んでいます。
- 有名な『バカの壁』から読むべき?
- 「壁」シリーズは、順番に読まないとわからない?
- 一冊読んでみたけれど、難しくて途中で止まってしまった
わたしが養老さんに興味を持ったのは、NHKのドキュメンタリー番組で、その暮らしぶりと考え方にふれたのがきっかけでした。そこから一冊ずつ読み進め、教養MAPでも要約と感想を書いてきました。
この記事では、これまで紹介してきた養老孟司さんの本5冊を、読む順番と悩み別にまとめました。読み終えるころには、いまのあなたに合う一冊がきっと見つかります。
この記事でわかること
- 養老孟司さんの本、最初の一冊の選び方
- 5冊の難易度と、おすすめの読む順番
- 悩み別のおすすめ
- 5冊に共通する、養老さんの3つの考え方
結論:最初の一冊は『バカの壁』か『人生の壁』
先に結論をお伝えします。
- じっくり考えたい人は『バカの壁』から:養老さんの考え方の原点がつまった一冊。先に読んでおくと、ほかの本の理解がぐっと深まります
- いま何かに行き詰まっている人は『人生の壁』から:語りかけるような口調で、養老さんの本が初めてでも入りやすい一冊です
どちらも新潮新書の「壁」シリーズです。1冊ずつ独立しているので、どちらから読んでもかまいません。
実は、わたしが最初に読んだのは『ものがわかるということ』で、『バカの壁』はずっとあとでした。読んでみて感じたのは、「先に『バカの壁』を読んでいれば、ほかの本がもっとすっと入ってきたのに」ということ。だからこそ、これから読むあなたには、この2冊のどちらかから始めてほしいと思っています。
著者・養老孟司さんとは
養老孟司さんは、1937年鎌倉生まれの解剖学者です。東京大学医学部を卒業し、現在は東京大学名誉教授。1989年に『からだの見方』でサントリー学芸賞を受賞しています。
2003年に出た『バカの壁』は、その年のベストセラー第1位に。450万部を超える大ベストセラーとなり、「壁」シリーズは新潮社によると累計690万部を突破しています。大の虫好きとしても知られ、いまも昆虫採集を続けています。
長いあいだ「からだ」と向き合ってきた人の言葉だから、頭の中だけの理屈ではなく、地に足のついた話として響く。それが、養老さんの本の魅力だと感じています。
5冊の一覧|難易度と、こんな人に
| 書名 | 出版社 | 刊行 | 読書難易度 | こんな人に |
|---|---|---|---|---|
| バカの壁 | 新潮社(新潮新書) | 2003年 | ★★★★☆ | 人と分かり合えずに悩んでいる |
| 人生の壁 | 新潮社(新潮新書) | 2024年 | ★★★★☆ | 何かに行き詰まっている |
| ものがわかるということ | 祥伝社 | 2023年 | ★★★☆☆ | 学んでも身についた気がしない |
| 養老孟司の人生論 | PHP研究所(PHP文庫) | 2023年 | ★★★☆☆ | 養老さんの考え方の根っこを知りたい |
| 特別授業「坊っちゃん」 | NHK出版 | 2018年 | ★★☆☆☆ | 名作を読み直したい・難しい本が苦手 |
読書難易度は、それぞれの記事でわたしがつけたものです。文章そのものはどれも平易ですが、養老さんの本は一度読んだだけでは理解しきれないことが多く、何度か読み返して少しずつ腹に落ちていくタイプの本です。
おすすめの読む順番
- 入口:『バカの壁』か『人生の壁』
- 深める:『ものがわかるということ』で、「わかる」とは何かを考える
- 根っこを知る:『養老孟司の人生論』で、その考え方がどこから来たのかを知る
- 息抜きに:特別授業「坊っちゃん」で、養老さんと一緒に名作を読む(いつ読んでもOK)
順番どおりでなくても大丈夫です。気になった一冊から、気楽に手に取ってみてください。
『バカの壁』——「話せばわかる」は思い込み
人は、知りたくないことには自分から耳をふさいでしまう。その、自分でつくってしまう理解の限界が「バカの壁」です。全8章を通して、脳、身体、教育、共同体などさまざまな角度から、この壁について語られます。
わたしの心に残ったのは、「個性を伸ばすことより、人の気持ちがわかることのほうが大切」という考え方です。人はもともと一人ひとり違う。だから、わざわざ個性を追いかけなくてもいい——そう言われて、少し肩の力が抜けました。
全8章の要約と感想は、こちらの記事にまとめています。
→ 『バカの壁』要約と感想|全8章のポイントでわかる養老孟司の大ベストセラー
『人生の壁』——ぶつかっても、かわしてもいい
2024年に出た、「壁」シリーズの一冊です。養老さんが自身の子ども時代から今日までを振り返りながら、誰もがぶつかる「人生の壁」をどう越えるか、どう上手にかわすかを語っています。
印象に残ったのは、「煩わしいことにかかわるのは大切」という話。わたしにも、留学先でのリーダー役や部活の係の仕事など、当時は不満ばかりだったのに、いまでは大きな経験になっていることがあります。面倒なことから反射的に逃げないことが、結局は自分のためになるのかもしれません。
全5章の構成と要約は、こちらの記事で紹介しています。
『ものがわかるということ』——わかるとは、自分が変わること
「わかる」とは、知識を積み上げることではなく、それによって自分の見方が変わること。そして、知ることと行うことは一つでなければならない——陽明学でいう知行合一(ちこうごういつ)の考え方が、本書の軸になっています。
大学生のころ、友人に「前に言っていたことと違う」と言われ、「生きていれば考えも変わるでしょ」と答えたことがあります。本書を読んで、あのとき感じた違和感がやっと言葉になった気がしました。わたしが初めて読んだ養老さんの本で、いまも何度も読み返している一冊です。
→ 『ものがわかるということ』|養老孟司さんが考える”わかる”とは何か
『養老孟司の人生論』——考え方の「根っこ」がわかる
養老さんが自分の人生を振り返りながら、その考え方がどこから生まれたのかを語った一冊です。「死」から語り始める、養老さんらしい”逆向き”の人生論。『運のつき』を改題・復刊した作品を、文庫化したものです。
戦争や大学紛争に「巻き込まれる」経験をしたからこそ、やったことがすべて自分に返ってくる解剖学を選んだ——その話を読むと、ほかの本で語られる考え方の背景が見えてきます。日本人は「自分流より世間流」で生きがち、という話も心に残りました。まわりに迷惑がかかるからと、有給を1日取ることさえためらう人を見るたびに、思い出す話です。
→ 『養老孟司の人生論』要約と感想|「死」から語る、養老さんの考え方の原点
特別授業「坊っちゃん」——養老さんと名作を読み直す
NHK「100分de名著」の「読書の学校」シリーズの一冊で、正式な書名は『NHK100分de名著 読書の学校 養老孟司 特別授業「坊っちゃん」』です。夏目漱石の『坊っちゃん』を題材に、「大人になる」とはどういうことかを読み解きます。
5冊の中でいちばん読みやすく、『坊っちゃん』を読んだことがなくても大丈夫です。わたしは以前、恩師に「物語にも読み方の型がある」と教わったことがあります。この本は、まさにその読み方を教えてくれる一冊でした。
→ 『NHK100分de名著 読書の学校 養老孟司 特別授業「坊っちゃん」』|養老さんと読む名作
悩み別:いまのあなたに合う一冊
| こんなとき | おすすめの一冊 |
|---|---|
| 職場や家族と、どうしても話が通じない | 『バカの壁』 |
| 仕事や人生に行き詰まっている | 『人生の壁』 |
| 「何のために生きているんだろう」と考えてしまう | 『人生の壁』 |
| 本や動画で学んでも、身についた気がしない | 『ものがわかるということ』 |
| まわりに合わせてばかりで、疲れている | 『養老孟司の人生論』 |
| 難しい本は苦手。でも養老さんの話は聞いてみたい | 特別授業「坊っちゃん」 |
5冊に共通する、養老さんの3つの考え方
5冊を読んでみると、本ごとにテーマは違っても、くり返し出てくる考え方があることに気づきます。一冊目を読み終えたら、次の本でこの3つを探しながら読むと、理解がぐっと深まります。
① 「わかる」とは、自分が変わること
知識を頭に入れるだけでは、「わかった」ことにはならない。やってみて、自分の見方が変わってはじめて「わかる」。『ものがわかるということ』の中心にある考え方で、『バカの壁』や特別授業「坊っちゃん」にも出てきます。
② 変わらない「私」なんていない
人は毎日、成長し、老いていく。だから「本当の自分」や「変わらない個性」を探さなくてもいい。『バカの壁』と『養老孟司の人生論』で、くり返し語られるテーマです。
③ 意味を求めすぎない
都市には、意味や役割のないものがほとんどありません。そんな社会に慣れると、自分の生きる意味まで考えすぎてしまう。『人生の壁』では、それよりも本気で楽しめることを探せばいい、と語られます。『ものがわかるということ』の「ああすれば、こうなる」の話ともつながっています。
このブログでまだ紹介していない「壁」シリーズ
新潮新書の「壁」シリーズには、ほかにも次のような本があります。
- 『死の壁』(2004年)
- 『超バカの壁』(2006年)
- 『「自分」の壁』(2014年)
- 『ヒトの壁』(2021年)
読んだら、この記事にも追加していきます。
よくある質問
Q. 養老孟司さんの本は、どれから読めばいいですか?
A. じっくり考えたい人は『バカの壁』、いま何かに行き詰まっている人は『人生の壁』がおすすめです。難しい本が苦手な人は、5冊の中でいちばん読みやすい特別授業「坊っちゃん」から入るのもよいと思います。
Q. 「壁」シリーズは、順番に読む必要がありますか?
A. ありません。1冊ずつ独立しているので、気になった一冊から読めます。ただ、シリーズの原点である『バカの壁』を読んでおくと、ほかの本の理解が深まります。
Q. 養老さんの本は難しいですか?
A. 文章はやさしいのですが、一度読んだだけで全部を理解するのは難しいと感じました。わからないところがあっても気にせず読み進めて、時間をおいて読み返すと、前はわからなかったことがふとわかる瞬間があります。
まとめ
養老孟司さんの本は、読むたびに少しずつ見え方が変わっていく本です。
同じ考え方が何度も出てくるのに、別の本で読むと、前の本でわからなかったことがふと腹に落ちる。だから一冊で終わらせず、何冊か読み重ねていくのがおすすめです。
最初の一冊は、『バカの壁』か『人生の壁』。気になったほうから、気楽に手に取ってみてください。
養老さんの本をどれから読もうか迷っているあなたへ。ぜひ一冊、手に取ってみてください。


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