皆さんは「調性」という言葉をご存じでしょうか?
音楽をやっていないとあまり馴染みがないかと思いますが、
ハ長調とかハ短調と言われると耳にしたことがあるのではないでしょうか。
調性とは
ある楽曲がどの音を主役にしてどのような音の並びのルールで構成されているかということです。
簡単にいえばそれぞれの調整に性格のようなものがあるという感覚に近いです。
この調性は音楽を演奏する上でも聴く上でも
とても重要な要素です。
この本では調性について、
音楽の知識がゼロの方でもわかりやすいように解説してくれています。
さらにCDが付属でついており実際に耳で体感することもできます。
『運命』はなぜハ短調で扉を叩くのか ~調性で読み解くクラシック~ の概要
音楽に詳しくなくても十分理解できる内容になっているため、
この本はこんな人におススメです。
この本は一貫して調性を中心に展開されていきます。
調の特徴や科学・楽器からみた調性の世界や歴史などが丁寧に解説されています。
今回はこの中から
特に面白いと思った内容をまとめていきたいと思います。
楽器によって得意な調性がある
様々な種類の調性があり、それぞれのカラーがあることは先ほどお話ししましたね。
では楽器から見てみるとどうでしょう?
実は楽器によって得意な調性というものがあるのです。
例えば弦楽器を代表するヴァイオリン。
4本の弦で構成されていますが、
ソレラミの順番で並んでいる。
何も押さえずに出すことができる音を開放弦と呼びますが、
この開放弦が基音(=主役)となる調(ト長調、ニ長調、イ長調、ホ長調)は
楽器が響きやすく演奏しやすいのです。
ちなみに全て#系の調です。
もちろん♭系の曲もたくさんありますが、
ヴァイオリン協奏曲などの弦楽器が活躍する楽曲は#系の曲が多いです。
管楽器も同じように得意な調性があります。
こういった特徴を理解していると、
オーケストラで聴く楽曲でも調性を見ればどの楽器を主役にしたいのかが、
わかることがあり世界が広がりますね。
楽器にとって得意な調があります。
では得意な調を選択するのがベストなのでしょうか?
合理的に考えればもちろん答えは「Yes」ですが、
必ずしもそうとは言えないのが芸術の面白い所です。
あえて響かせにくい調を選択して重々しい雰囲気を演出したり、
もどかしさや負の感情を表現したりと不得意な調にしかだせない世界観があります。
バロック時代までは響かせやすい長調の一強時代だったそうですが、
モーツァルトが短調を楽曲の表現として使ってから短調の曲も広まっていったということです。
こうして音楽の世界が広がっていきました。
・楽器によって得意な(響かせやすい)調があり、オーケストラやアンサンブルでは調を見ることでどの楽器が主役なのかがわかる場合もある。
・楽器によって響かせやすい調とそうでない調があるが、響かせやすい調が必ず良いというわけではない。響かない調であることは決してマイナスなことではなく、それは大事な個性として作曲家によって表現される。
運命はなぜハ短調なのか?
本のタイトルにもなっているベートーヴェンの運命という楽曲。
全4楽章で構成されているうちの
1楽章がハ短調で展開されます。
1楽章といえば、
「ジャジャジャジャーン!」
から始まるあまりにも有名すぎる楽曲です。
このメロディーからもわかるように、
ハ短調は暗くて力強い印象です。
ベートーヴェンは
「運命が扉を叩くのはこんな風だろう」
としてハ短調にしたと言われています。
このハ短調を影とするならばその対をなす光はハ長調。
ハ長調は#や♭が一切使われていない最も明るいとされる調です。
このハ長調は運命の4楽章で使われています。
つまり暗い1楽章から明るい4楽章へ解放されていく流れを持っているのです。
1楽章の暗い展開があるからこそ、
4楽章の明るさや鮮やかさ、解放感がより増して感じるのです。
調ごとにイメージや特徴があり、作曲家は描きたいものやストーリーに合わせて調を選択している
この本を読んで感じたこと
この本は私の高校時代の恩師がお薦めしてくれた本です。
「世界は意味で溢れかえっている」
こう言ってお薦めしてくれたのを今でもよく覚えています。
そしてその言葉の通り、
この本は読むとそれをすごく実感できます。
聴いているだけでも楽しい音楽ですが、
調性一つ取っても意味のあるものばかりです。
そしてその意味が理解できたとき、
平面でしか楽しめなかったものが、
立体的になり色鮮やかになっていきます。
特に文化的なものを背景に持つものは尚更。
今楽しいと思っている音楽を
より深く読み解くことができる入門書のような本です。
ぜひ一度手に取って見てください。
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