【本の要約・レビュー】『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語』~様々な奇書を紹介 中でも台湾誌は必読~

皆さんは「奇書」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
奇書とは一般的に「内容が奇抜、突飛、難解な本」を指します。

本好きの方なら一度はこの「奇書」という言葉は聞いたことがあると思います。

よく話題にあがるのが、
「ドグラ・マグラ」
「黒死館殺人事件」
「虚無への供物」

この3冊はその内容の難解さから
「日本三大奇書」
なんて言われています。

今回レビューする
「奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語」
では奇書について扱っていきますが、上に記した3冊は扱われていません。

というのもこれらの本は著者が、
「奇書になるべし」と狙って書いた本です。

本書では
もともとは広く大衆に受け入れられていたが、時代の移り変わりの中で奇書という評価を得るようになってしまった
そんな本を紹介していきます。

目次

『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”』の物語の概要

出版社:KADOKAWA
発売日:2019/8/23
ページ数: 320ページ
この本の読書難易度は★5中3です。

今回ご紹介する本はこんな人におススメです。

・普段読まないような珍しい本を知りたい

『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”』から印象的な本を紹介

本書ではいくつかの奇書が紹介されています。
その中でも特に印象に残った一冊を紹介せていただきます。

『台湾誌』~1人の男の嘘だけで書かれた書物~

台湾誌は1704年、ロンドンで出版された奇書です。
作者はジョルジュ・サルマナザールという人物。

彼は幼少期を台湾で過ごしたとされ、
その経験を台湾誌に書きました。

当時のアジアは西洋社会において未開の地でした。
そのため当時の知識階級にとって、
彼の書いた台湾誌は非常に文化的価値の高いものとなり、
広く受け入れられていきました。

ただしその内容は全てサルマナザールの想像で書き上げられた、噓八百の文章だったのです

台湾誌に書かれた内容

台湾誌に記載されていた内容は下記のようなものでした。※「」は注釈の本より引用
・「台湾人は蛇を食す」
・「台湾では毎年2万人もの少年の心臓を神にささげる」
・「上着を一枚羽織るだけで陰部を金属製の皿で隠している」

ちなみに日本についても言及されていました。
・「日本人はいつも小さな帽子をかぶっている」
・「日本人の祖先は最初、台湾島に居住したため、いまでも台湾島には日本の言語、風俗が残っている」
などと全て彼の嘘八百、出まかせで書かれたものでした。

※引用元:奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語

著者のジョルジュ・サルマナザールについて

ジョルジュ・サルマナザール
Antérieur à 1763 – Gravure ancienne, パブリック・ドメイン, リンクによる

サルマナザールの正確な出自は不明ですが、
1680年ごろに南フランスで生まれました。

16歳まで修道院で教養を学び、
ラテン語や倫理学といった分野で優れた才能を発揮しました。

しかし修道院での生活に嫌気のさしたサルマナザールは、
自身を修道士だと名乗りながらヨーロッパ各地を放浪することとなります。

修道士としての生活は、人々からの施しが主な収入源の厳しいものでした。
そんなある日、彼は他の修道士が話している「日本人」に興味を持ち、
試しにキリスト教に改宗した日本人を演じてみました。

すると驚いたことに信心深い人たちから、多額の施しをもらうことが出来ました。
(実際のサルマナザールは西洋人そのものの顔つきにも関わらず、
なぜ周りを信じ込ませることが出来たのかは不思議ですが。。。)

これがサルマナザールのついた嘘の始まりでした。

日本人としてしばらく生活をしていたサルマナザールでしたが、
とある人物にその正体を見破られてしまいます。

ここでサルマナザールの嘘も終わりになるかと思いきや、
なんとその嘘を見抜いた人物は彼に「台湾人」を名乗るように勧めます。

サルマナザールに台湾人として活動させ、
その活動からの儲けをもらおうと考えたのです。

ちなみになぜ台湾人かというと、当時日本には宣教師が来ており、
いずれ日本を知る人物によってウソがばれてしまう恐れがある一方で、
台湾はまだ未開の地だったからです。

こうして彼は台湾人として生活を送っていくことになり、
その生活の中で問題の台湾誌を書き上げることになります。

嘘の巧みさ

こんな荒唐無稽な嘘をつけば、すぐにばれてしまいそうですが、
なかなか嘘はバレませんでした。

というのも、サルマナザールの台湾の想像はとても精緻で、
どんな質問にも瞬時に答えることが出来ました。

それに加えて、彼はなんと事前に台湾文字や文法まで自分で生み出して暗記していました。

嘘はもちろんよくありませんが、彼の持つ暗記力や弁論の能力は非常に高かったのです。

嘘がばれた日 天才による追及

Edmond Halley 072
Richard Phillips, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

巧みな嘘で台湾人として生活を行ってきた彼ですが、
そんな生活も終わりを迎えます。

1人の天才による追及が、彼の嘘を暴きます。

その人物とは、「エドモンド・ハレー」
当時、天文学、数学、地球物理学等に多大な業績を上げていた天才です。
(ハレー彗星の名前の元になった人ですね)

彼は、台湾誌に描かれた日照時間や星図から矛盾を見つけ出し、
天文学見地からサルマナザールに質問を浴びせました。

今まで嘘や詭弁で乗り切ってきた、サルマナザールですが、
正解のある質問に回答することはできません。

ついに彼は全ての嘘を自白して、台湾人としての生活を終えることになります。

まとめ 自分の頭で考えることが結局大切

本書で紹介されている本は、今読めば到底信じられない内容のものが多いです。
しかし当時は本気でその内容が信じられていました。

きっと当時の権力者や今でいうマスメディア的な存在が、
それらが正しいと流布したのでしょう。

そして民衆はそれを信じ込んでしまっていた。
今回この本を読んで思ったことは


情報は自分の頭のフィルターを通してから、良し悪しを決めることが大切

現代でも、テレビやネットで様々な情報が流れてきます。
ここで大切なことはそれらの情報を鵜呑みにするのではなく、
一度自分の頭でそれらが本当に合っているのかを考えることが大切です。

そうでないと、誤情報を信じ込まされてしまったり、
不利益を被ることになります。

本書で扱っている本は今よりはるか昔のものですが、
それらの内容は我々現代人にとって、
大きな示唆を与えてくれる内容になっていると思います。

興味を持った方はぜひ読んでみてください!

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