旅をする木の概要
【本の概要】
本のタイトル:旅をする木
出版社:文藝春秋
発売日:1999/3/10
ページ数:241ページ
この本の読書難易度は★5中、★2です!
著者がアラスカの生活で感じたこと・考えたことが書かれています。
中高生でも読める内容となっていますので、★2とさせて頂きました。
●読もうと思ったきっかけ
・本屋でたまたま手に取った時、自分の生まれた日に、筆者が亡くなっていることを知り
何か縁を感じて読んでみようと思った。
・パラパラめくった時の、言葉の美しさ、柔らかさに惹かれた。
・吉田 覚さんの『働かないふたり』という漫画に登場したのを見て、興味を持った。
著者・星野道夫とは
著者は1952年千葉県に生まれた、写真家・エッセイストです。
日本の大学を卒業後、アラスカ大学野生動物管理学部に入学。
それ以降は、アラスカを生活の起点として、
撮影、執筆活動を続けます。
写真の腕前は素晴らしく、写真界の芥川賞
と言われる「木村伊兵衛写真賞」を受賞しています。
1996年8月8日、カムチャッカ半島での撮影中に
ヒグマの事後により急逝されました。
亡くなって時間がたちますが、著者の残した写真や
著書は今なお、人々に愛されています。
ちなみに私の持っている旅をする木は、なんと第53刷です!
ロングセラーなことがわかりますよね。
「旅をする木」の概要・あらすじ
アラスカの雄大な自然を撮り続けた筆者が、
その撮影生活の中で感じたことを
エッセイとしてまとめています。
1つ1つの文章は、それほど長くなく
様々な視点での話が展開されていきます。
文章はコンパクトですが、その文章に込められた
”美しさ、柔らかさ、心地よさ”は私が今まで
読んだ本の中でナンバーワンといえます。
写真家でありながら、巧みな文章表現に
いちいち頷きながら読んでしまいます。
「旅をする木」から学んだこと、心に残ったこと
巧みな表現で情景が豊かに想起される文章
遠くの山の肩から、点のようなカリブーが次々と現れてくるではないか。
星野道夫(1999/3/10)「旅をする木」文藝春秋
稜線上の点は次第に太い線となり、やがて黒い帯となって山の斜面を埋め尽くし、
まっすぐこちらに向かってくる。
いかがでしょう。そのシーンが目に浮かんでは来ませんか?
筆者の文章は、比喩表現が非常に豊かです!
上記の文章のように、
「カリブーが点となって現れ、線となり、帯となる」といった表現は、
まるでその場に自分がいるかのような気持ちにさせてくれる
巧みな文章表現だと思います。
自然から学ぶ生き方、哲学
人間の気持ちとは可笑しいものですね。
星野道夫(1999/3/10)「旅をする木」文藝春秋
どうしようもなく些細な日常に左右されている一方で、
風の感触や初夏の気配で、こんなにも豊かになれるのですから。
人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。
きっと、その浅さで、人は生きてゆけるのでしょう。
筆者の文章はただ、自然を描写するだけに留まりません。
自然をただ描写するのではなく、そこから学んだこと
筆者の考え方も書かれているため、そこから多くのことを学ぶことができます。
上記の引用文もまさにそうです。
厳しい大自然に、長い間触れてきた筆者ではなければ
書けない文章だと思います。
現代の情報社会とは真逆の世界で生活をしていた筆者の文章は
私たちが忘れている自然とのかかわり方をもう一度思い直させてくれます。
なぜ本書は読み継がれているのか。
現代社会は情報化社会。
ものすごいスピードで情報やモノが社会の中を動いています。
その動きに対応するように、われわれ人間の生活も
スピード・効率性を求められるようになってきていると思います。
事実、そういった類の自己啓発本はベストセラーになっていますし
それらが必要とされるのも頷ける社会構造です。
その生活の中で確実に人々は疲弊していっています。
だからこその著者の本書が読者の心を癒してくれるのでしょう。
著者が住んでいたのは大自然のアラスカです。
資本主義社会から遠く離れた世界で生きる作者の思考・生き方は
アクセル全開で生きる我々に気づきを与え立ち止まって考えるきっかけを与えてくれるのです。
だからこそ本書は時代を超えて現代社会に疲れた人々を癒し、
今まで読み継がれてきたのでしょう。
ぼくが暮らしているここだけが世界ではない。
様々な人々が、それぞれの価値観を持ち、遠い異国で自分と同じ一生を生きている。つまりその旅は、自分が育ち、今生きている世界を相対化して視る目を初めて与えてくれたのだ。
星野道夫(1999/3/10)「旅をする木」文藝春秋
「旅をする木」の感想・こんな人におススメ!
にぜひ、本書を読んでほしいです。
自然と常に接してきた筆者の言葉は、日々をせわしなく過ごす我々に
沢山の気づきを与えてくれます。
あと個人的に文章を読んで思ったのですが、
きっと筆者は心が温かい人だったんだろうなあ。。。と
思います。
これは文章を読めば分かって頂けると思います。
興味を持った方は是非読んでみてください!
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