日々の忙しさの中で、ふと立ち止まりたくなったことはありませんか。
この記事では、アラスカの自然を見つめ続けた写真家・星野道夫のエッセイ『旅をする木』について、どんな本なのか(あらすじ・内容)と、心に残った言葉、私の感想を紹介します。
2026年は星野道夫の没後30年。今も「人生を変えた一冊」に挙げる人が多い名作です。
『旅をする木』の基本情報

【本の概要】
本のタイトル:旅をする木
著者:星野道夫
出版社:文藝春秋(文春文庫)
発売日:1999/3/10(単行本は1995年8月刊)
ページ数:256ページ
定価:770円(税込)
解説:池澤夏樹
この本の読書難易度は★5中、★2です!
著者がアラスカの生活で感じたこと・考えたことが書かれています。
中高生でも読める内容となっていますので、★2としました。
●読もうと思ったきっかけ
・本屋でたまたま手に取った時、自分の生まれた日に、筆者が亡くなっていることを知り
何か縁を感じて読んでみようと思った。
・パラパラめくった時の、言葉の美しさ、柔らかさに惹かれた。
・吉田 覚さんの『働かないふたり』という漫画に登場したのを見て、興味を持った。
この本で得られること:アラスカの自然の中で綴られた、短くて美しい言葉に浸る時間。気になった方は、下のリンクから詳細をご覧ください。
『旅をする木』のあらすじ・内容|どんな本?
最初にお伝えしておくと、『旅をする木』は小説ではなくエッセイ集です。一つの物語が最初から最後まで続くわけではないので、「あらすじ」というより、どんなことが書かれた本なのかを紹介します。
舞台は、広大な大地と海に囲まれたアラスカ。アラスカに移り住んだ星野道夫が、そこで出会ったエスキモー(先住民)や、開拓時代にやってきた白人たちの暮らし、カリブーなどの野生動物、そして季節がめぐる大自然の姿を、やわらかな文章で綴っています。
1つ1つの文章はそれほど長くなく、どこから読んでも楽しめます。寝る前に1篇ずつ読む、という読み方もおすすめです。
表題作の「旅をする木」では、一本の木がたどる長い長い「旅」が描かれます。木も、動物も、人も、それぞれの時間の中で旅を続けている――そんな星野道夫のまなざしが、この本全体に流れています。
文章はコンパクトですが、その文章に込められた
”美しさ、柔らかさ、心地よさ”は私が今まで
読んだ本の中でナンバーワンといえます。
写真家でありながら、巧みな文章表現に
いちいち頷きながら読んでしまいます。
著者・星野道夫とは
著者は1952年千葉県に生まれた、写真家・エッセイストです。
日本の大学を卒業後、アラスカ大学野生動物管理学部に入学。
それ以降は、アラスカを生活の起点として、
撮影、執筆活動を続けます。
写真の腕前は素晴らしく、写真界の芥川賞
と言われる「木村伊兵衛写真賞」を受賞しています。
1996年8月8日、カムチャッカ半島での撮影中に
ヒグマの事故により急逝されました。
亡くなって時間がたちますが、著者の残した写真や
著書は今なお、人々に愛されています。
ちなみに私の持っている旅をする木は、なんと第53刷です!
ロングセラーなことがわかりますよね。
「旅をする木」から学んだこと、心に残ったこと
巧みな表現で情景が豊かに想起される文章
遠くの山の肩から、点のようなカリブーが次々と現れてくるではないか。
星野道夫(1999/3/10)「旅をする木」文藝春秋
稜線上の点は次第に太い線となり、やがて黒い帯となって山の斜面を埋め尽くし、
まっすぐこちらに向かってくる。
いかがでしょう。そのシーンが目に浮かんでは来ませんか?
筆者の文章は、比喩表現が非常に豊かです!
上記の文章のように、
「カリブーが点となって現れ、線となり、帯となる」といった表現は、
まるでその場に自分がいるかのような気持ちにさせてくれる
巧みな文章表現だと思います。
自然から学ぶ生き方、哲学
人間の気持ちとは可笑しいものですね。
星野道夫(1999/3/10)「旅をする木」文藝春秋
どうしようもなく些細な日常に左右されている一方で、
風の感触や初夏の気配で、こんなにも豊かになれるのですから。
人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。
きっと、その浅さで、人は生きてゆけるのでしょう。
筆者の文章はただ、自然を描写するだけに留まりません。
自然をただ描写するのではなく、そこから学んだこと
筆者の考え方も書かれているため、そこから多くのことを学ぶことができます。
上記の引用文もまさにそうです。
厳しい大自然に、長い間触れてきた筆者ではなければ
書けない文章だと思います。
現代の情報社会とは真逆の世界で生活をしていた筆者の文章は
私たちが忘れている自然とのかかわり方をもう一度思い直させてくれます。
なぜ『旅をする木』は今も読み継がれているのか
現代社会は情報化社会。
ものすごいスピードで情報やモノが社会の中を動いています。
その動きに対応するように、われわれ人間の生活も
スピード・効率性を求められるようになってきていると思います。
事実、そういった類の自己啓発本はベストセラーになっていますし
それらが必要とされるのも頷ける社会構造です。
その生活の中で確実に人々は疲弊していっています。
だからこその著者の本書が読者の心を癒してくれるのでしょう。
著者が住んでいたのは大自然のアラスカです。
資本主義社会から遠く離れた世界で生きる作者の思考・生き方は
アクセル全開で生きる我々に気づきを与え立ち止まって考えるきっかけを与えてくれるのです。
だからこそ本書は、時代を超えて、現代社会に疲れた人々の心を癒し続けてきたのでしょう。
実際、『旅をする木』は今も広がり続けています。韓国語・中国語・スペイン語に翻訳され、2026年には英訳版も刊行されました。また、1冊の『旅をする木』を読者から読者へ手渡していく「旅をする本」というプロジェクトもあり、まさに本そのものが旅を続けています。
ぼくが暮らしているここだけが世界ではない。
様々な人々が、それぞれの価値観を持ち、遠い異国で自分と同じ一生を生きている。つまりその旅は、自分が育ち、今生きている世界を相対化して視る目を初めて与えてくれたのだ。
星野道夫(1999/3/10)「旅をする木」文藝春秋
『旅をする木』についてよくある質問
小説ですか? エッセイですか?
エッセイ集です。アラスカでの暮らしや出会いを綴った短い文章が集められています。
何ページくらいですか? 読むのに時間はかかりますか?
文春文庫版は256ページです。1篇ずつが短いので、まとまった時間がなくても少しずつ読み進められます。
中高生でも読めますか?
読めます。難しい言葉は少なく、文章もやさしいので、私は読書難易度を★2としました。読書感想文の題材にもしやすい一冊です。
『旅をする木』の感想|こんな人におすすめ
にぜひ、本書を読んでほしいです。
自然と常に接してきた筆者の言葉は、日々をせわしなく過ごす我々に
沢山の気づきを与えてくれます。
あと個人的に文章を読んで思ったのですが、
きっと筆者は、心の温かい人だったんだろうなと思います。
これは実際に文章を読んでいただければ、きっと分かっていただけると思います。
興味を持った方は、ぜひ手に取ってみてください。
また、自然や生き物から人生観を学べる本に興味がある方は、『はずれ者が進化をつくる』のレビューや、『生き物が老いるということ』のレビューもあわせてどうぞ。
この本で得られること:アラスカの自然の中で綴られた、短くて美しい文章にじっくり浸る時間。忙しさで疲れた心を、星野道夫の言葉がそっとほぐしてくれる一冊です。気になった方は、下のリンクから詳細をご覧ください。

コメント
コメント一覧 (1件)
[…] なお、竹内洋岳さんはその後も登山家としての活動を続けており、「下山」をテーマにした『下山の哲学──登るために下る』(太郎次郎社エディタス)という書籍も刊行しているようです。「登り切る」ことだけでなく「無事に下りる」ことの大切さについても、あわせて考えさせられる一冊のようです。竹内さんのプロフィールや最新の活動については公式サイトでも確認できます。また、厳しい自然環境に身を置きながら自らの内面と向き合うという点では、当サイトで紹介している『旅をする木』のテーマにも通じるものがあると感じます。 […]